暗号学的順序検証可能性
記録されたイベントの順序と帰属を第三者が検証できること。ハッシュチェーンは許容される機構の一つであり、唯一の機構ではない。
なぜ存在するのか
各法域の法制度・ガバナンス文書は、AIシステムに対するログ保存と人間による監督(human oversight)を ますます要求している。しかしそれらが定めるのは義務であって、その履行を事後に独立検証する方法ではない。 そして検証の最難関は、改ざんされた記録の検知ではない。そもそも作られなかった記録の検知である。
署名・WORMストレージ・監査ログといった古典的な完全性技術は、「存在する記録」については証明できる。 VAPが設計の中心に据えるのはもう一方の問題 — 記録の不存在を、宣言された粒度で、限界を開示した上で、 第三者が検査可能にすることである。
| Tier | 状態 | VAP上の扱い |
|---|---|---|
| Tier 1 | イベントが一度も計測されなかった — 観測境界を何も越えていない | 設計上、恒久的に復元不能。VAPは沈黙する。いかなる機構もこれを再構成せず、いかなる実装もそう装ってはならない |
| Tier 2 | 計測されたが、アンカリング前に記録が失われた | 有界かつ開示される — 欠落そのものがアンカーギャップ・イベントとして境界付きで記録される |
| Tier 3 | アンカーされた後、提示時に省略された | 完全性インバリアント(INT-008)により第三者が検知可能:省略/スプリットビュー検知 |
スコープを率直に
“…does not warrant the correctness, fairness, or safety of the underlying AI decisions — only the integrity, completeness (at anchor granularity), and attributability of their records. VAP generates evidence; competent authorities and courts evaluate it.”
〔参考訳〕…基盤となるAIの判断の正しさ・公平性・安全性を保証するものではない — 保証するのは、その記録の完全性(アンカー粒度における)、完全性検証可能性、および帰属可能性のみである。VAPは証拠を生成する。それを評価するのは、権限ある当局および裁判所である。
メカニズム
記録されたイベントの順序と帰属を第三者が検証できること。ハッシュチェーンは許容される機構の一つであり、唯一の機構ではない。
v1.2では、署名済みルートのMerkleバッチングと外部アンカリングが全適合レベルでMUST。アンカー継続計画の文書化も要求される。
アンカーを保持する検証者は、アンカー後の省略やスプリットビュー提示を検知できる:各AnchorRecordはイベント件数・先頭/末尾イベントID・適用ポリシー識別子を拘束する。
拒否・否認・却下といった負の判断も、承認と同じ厳密さで記録する。成功しか記録しないシステムは、何を退けたかについて何も証明しない。
オフラインで第三者検証が可能な、自己完結・自己検証型の持ち運び可能バンドル — 記録・証明・アンカー・鍵情報を、生成元システムへのアクセスなしに検証できる。
観測スコープを事前に宣言し、複数当事者による独立の相互参照ログ(XREF)で、単独の当事者の記録だけが立つ状況を避ける。
ファミリー
VAP自体は決してプロトコルではない。プロファイルがフレームワークを各分野の意味論に結び付ける。 〈Protocol〉の呼称を持つのはただ一つの文書 — VCPである。
金融・アルゴリズム取引 — 資本市場AIの監査標準プロファイル。ファミリーで唯一〈Protocol〉の呼称を持つ文書。
コンテンツ・知的財産に関わるAIワークフロー(取り込み・学習・生成・変換・出力)に検証可能な証拠レイヤーを与える。ゲーム・映画・アニメ・出版・音楽が対象領域。
操作者が保持するデバイスで撮影・取得されたメディアのプロビナンス(一次取得)。OAPの姉妹プロファイル。
臨床・給付ワークフロー:AI出力、人間によるレビュー、オーバーライド、署名確定の記録を改ざん検知可能かつ第三者検査可能にする。
URLで観測された第三者ウェブ資源の記録 — 他者が公開し、後に争われ・削除され・編集され・否認されうるがゆえに保全される素材。
与信スコアリング、給付判定、出入国、採用AI。捜査判断語彙(Investigative-Decision Vocabulary)フラグメント v0.2 草案が最初の公開トラック。
標準化活動
IETFのRATSおよびSCITT領域で5本のドラフトが有効。あわせてVSOは、事前登録済みの評価プロトコルの下で ISO/IEC JTC 1/SC 42 および ITU-T SG17 の関連作業を追跡・評価している。
draft-kamimura-vap-framework-01 — The VAP framework event and anchoring modeldraft-kamimura-scitt-vcp-03 — VCP alignment with the SCITT architecturedraft-kamimura-scitt-refusal-events-03 — Refusal / denial events in transparency servicesdraft-kamimura-rats-behavioral-evidence-02 — Behavioral evidence in the RATS architecturedraft-vso-cpp-core-03 — CPP core (capture provenance)正直なベースライン
2026年8月時点:外部実装ゼロ、有償顧客ゼロ、法的手続で受理された Evidence Pack ゼロ。 すべてのVSO文書はこの開示を必須で掲げる。まだ存在しないものを、存在するものと同じ明瞭さで公表する — 自らの実績を誇張するプロビナンス・フレームワークは、それ自体が自己否定だからである。
仕様はオープン(CC BY 4.0)で、GitHub上で 開発されている。実装者・レビュアーを歓迎する:standards@veritaschain.org